皇帝龍は構わずル


《それは我が決めること。聖龍の取り決めは人間の都合や思惑とは別の次元にあるV-Shape瘦面

 まるで唄うようにそう告げると、皇帝龍は長い尻尾をルカの細い腰に巻き付け、自分の背に持ち上げたのである。驚くルカだったが、皇帝龍は構わずルカをその背に乗せた。

「な、何!」

 ルカと皇帝龍のやり取りを見守っていた魔導師の一人が思わず声を上げる。何と皇帝龍も先程の白龍――――――否、黄金竜・陽炎同様の変化を見せ始めたのだ。ポロポロと落ちた紫一色の鱗の下からは紫苑色と朱鷺色、二色が交互に煌めく鱗が姿を見せる。だが驚くには早すぎた。皇帝龍は色が変化した翅を拡げると声高らかに歌い出したのである。その唄は黄金龍のそれよりも力強く、しかしどこまでも優しかった。龍の言葉は解らなくても明らかにそれは恋唄だ――――――その場に居た者達は瞬時にそれを理解し、皇帝龍の喜びの恋唄に耳を傾けた許智政醫生



 突如華都上空に現れた黄金龍と、それに連れて行かれてしまった紫龍を追いかけ、カイト率いる青龍隊とメイト率いる赤龍隊が『救いの村』に向かっていた。それぞれグリフォン隊と化蛇隊という精鋭を引き連れての追跡だ。
 さすがに首都・華都に今まで見たことがない龍が出現し、しかも皇帝龍を引き連れてどこかに行ってしまったとなれば一大事である。下手をしたら帝位に関わってくるかもしれない。進軍しつつ、心の中に緊張と焦りをカイトが覚え始めたその時である。不意にスミレの耳がピン、と立ち、珍しく吠えたのだ許智政醫生

「な、何があったんだ、スミレ?」
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